「数字合わせの退所は人権侵害」 新ビジョンの里親委託率で激論

2017年1215 福祉新聞編集部
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左から奥山、山本、藤野、慎の各氏

 厚生労働省の検討会が8月にまとめた新しい社会的養育ビジョンをテーマにしたフォーラムが11月19日、都内で開かれ、約200人が参加した。NPO法人「Living in Peace」(慎泰俊理事長)の主催。厚労省審議官や検討会座長が里親委託の推進に向けた数値目標に理解を求めたのに対し、施設側は「子どもの人権侵害につながる」と懸念するなど火花が散った。

 

 2016年の改正児童福祉法を具体化した新ビジョンは、原則就学前の施設入所停止や、7年以内の里親委託率75%以上など数値目標を定めた。また、施設に対しては、入所期間を1年以内とし、機能転換も求めている。これに対して全国児童養護施設協議会は、「驚きと衝撃だ」と反発していた。

 

 フォーラムには、山本麻里・厚労省子ども家庭局審議官や、検討会座長の奥山眞紀子・国立成育医療研究センター部長、前全養協会長の藤野興一・鳥取こども学園理事長が登壇した。

 

 奥山氏は、2000年以降の社会的養育について話した上で「新ビジョンは施設による地域支援がポイント。子どもがずっと代替養育でいるのは権利問題としておかしい」と述べた。

 

 山本審議官も、改正児童福祉法の理念を形にするには大きな絵を描いた方がよいとの認識で検討会を立ち上げたと説明。今後、新ビジョンを自治体の現場に落とし込むにあたっては、丁寧な議論が必要との認識を示した。

 

 これに対して藤野氏は、新ビジョン通りに議論が進むことを危惧し「数値目標を掲げれば人権侵害が続発する」と懸念した。子どもや保護者に個別対応することが大切だとし「何カ月以内に退所させると目標を掲げることは、子どもの権利条約に違反する」と持論を展開した。

 

 この発言に山本審議官は、個々のケースを判断する際に新ビジョンの数値目標が影響することはないと否定した。その上で「極めて高い数値目標が掲げられているが、里親支援などの体制を最大限努力せよという行政へのメッセージだ」と理解を求めた。

 

 奥山氏も「数字がなければ注目を浴びていなかっただろう。入れてよかった」と強調。続けて「新ビジョンは子どもの権利を守ることはどういうことか1年議論した結晶。ざっと読んで、すぐ分かるはずがない」と一蹴した。

 

 藤野氏は、施設の機能転換と里親委託を進めることで、児童養護施設は今後半数に減るとの見通しも示した。

 

 これについて、山本審議官は「里親委託を進めれば施設がなくなるわけではない」と明確に否定。奥山氏も「施設は高機能化して、里親と一緒に大変なお子さんを見てほしい」と語った。

 

 

 

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