あえて分割繰り返す社福法人 共生社会めざし人づくり(札幌)

2017年1220 福祉新聞編集部
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加藤さん(左)と口屋さん

 社会福祉法人札幌この実会(佐藤保理事長、札幌市西区)は、2008年3月に知的障害者の入所施設を廃止してから16年8月までに法人分割・事業譲渡を重ねてきた。サービス利用者、職員がお互いに顔の見える関係であり続けるには、法人規模が大きくなりすぎない方が良いと判断したからだ。障害の有無にかかわらず共生できる社会をつくるには、人づくりが欠かせないとの信念が根底にある。そして今年からは自主事業として総合相談も始めた。 

 

 「法人を背負わせないと職員は育たん」。加藤孝・札幌この実会常務理事(77)は言い切る。障害者が地域で暮らせるようにするには、職員が障害者やその家族、地域の人と顔が見える関係を築き、法人内でも責任を持つことが必要だとみる。

 

 同会が「法人分割」を重ねてきたのはそのためだ。「社会福祉法人あむ」は訪問、通所、短期入所や相談機能を持ち、「NIKORI」は主に就労自立を支える。「藻岩この実会」は未就学の障害児支援から高齢障害者の入所機能まで幅広く対応するといった特徴を持つ。

 

 経営効率を考え規模の拡大を図る昨今の潮流と逆行するようにも見える分割だが、加藤さんは「私は障害福祉の専門家ではなく障害者の同伴者でありたい」とし、非効率との批判も意に介さない。

 

 加藤さんの薫陶を受け、内閣府の障害者政策委員会で委員を務める「NIKORI」の山崎千恵美・統括施設長も「一般就労する知的障害者でも、勤務時間外に一人きりでいられる人は少ない。本法人の利用者は約100人。これくらいが限界では」と話す。

 

施設廃止し住まい確保

 

 これら4法人はいずれもグループホーム(共同生活援助=GH)を持つ。それは札幌この実会が1973年開設の知的障害者の入所施設「手稲この実寮」を08年3月に廃止したことと無関係ではない。

 

 手稲この実寮では、GH制度化(89年)よりも前の82年から徐々に一軒家での暮らしを試行。寮にいる障害者の希望を尊重し、保護者を安心させるため、街中での住まい確保と生活支援体制づくりに力を注いできた。

 

 三つの法人に事業を移してきた札幌この実会は現在、短期入所、就労継続支援B型事業などを運営するが、分割後も動きを止めたわけではない。

 

 今年1月には高齢、障害、児童など分野を問わない総合相談「みすく・うえる」を自主事業として開始。職員が通常業務のかたわら専用電話で相談を受け、ケースによっては地域にも出向く。

 

 「地域に貢献し、職員をさらに成長させたい」と話すのは口屋美子所長。「相談件数は多くないが、高齢者施設や大学など意外なところから障害福祉に関係することで問い合わせがある」話す。

 

 共生社会をつくるには人づくりが必要だと考える加藤さんは、自身の名刺に「平成の福祉屯田兵」と書く。地域を拓ひらくという使命感からだ。口癖は「法人が職員を管理しすぎて『人間倉庫』になってはいかん」。屯田兵の目が光って見えた。

 

【札幌この実会から分割された法人】

 

2009年3月 (1)社会福祉法人あむ(中央区)

          在宅支援=居宅介護、短期入所、相談支援など

 

2011年9月 (2)社会福祉法人NIKORI(西区)

          就労・住居=宿泊型自立訓練、就労移行支援など

 

2016年9月 (3)社会福祉法人藻岩この実会(南区)

          全世代対応=施設入所支援、児童発達支援など

 

 

 

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