「社会的養育の都道府県計画、見直し方針は妥当」 草間吉夫教授インタビュー

2018年0206 福祉新聞編集部
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くさま・よしお=1966年生まれ。乳児院と児童養護施設で育つ。東北福祉大学院博士課程修了。児童養護施設に5年勤務。2006~14年、茨城県高萩市長。現在、厚労省の社会保障審議会児童部会委員も務める。

 厚労省が示した見直し要領の骨子案は、国として里親委託率の高い数値目標を掲げながらも、自治体に強制する内容ではなかった。草間吉夫・東北福祉大特任教授に話を聞いた。

 

ーー骨子案をどう見ますか。

 

 着地点として、非常に現実的で妥当な骨子案です。自治体によって意識も違うし、施設や里親など社会資源は異なります。地域の実情に応じて進めるべきなのです。

 

 そもそも社会的養育は生活保護業務のような法定受託事務ではなく、自治事務ということも大きいです。国は自治体への強い関与はできず、是正要求くらいしかできません。

 

 進捗状況を毎年評価するのも大事です。足りない社会資源も可視化される。行政の行動原理として、ほかの自治体と客観的に比べられれば意識が変わり、取り組みは前進するでしょう。

 

ーー新ビジョンには児童養護施設から反対の声も上がっていました。

 

 当然です。数値目標はあまりにも性急で、明らかに踏み込み過ぎでした。これは幕末に開国を迫った黒船のようなものです。

 

 もちろん、新ビジョンの全体の方向性ついては賛成です。家庭養育の原則や、施設の小規模化、地域分散化は進めるべきでしょう。

 

 児童養護施設のメリットは、複数で関与でき、ある程度支援の中身を透明化できることです。問題を起こした施設があるのも事実ですが、法人として子どもをみることは養育の質を一定程度担保できます。 

 

 一方、里親の養育はある意味、ブラックボックスです。里親家庭でも虐待などの事件が起きる可能性はゼロではありません。子どもへの愛情があるという性善説で進めているのが現状で、おそらく児童相談所にも不安がある。

 

 里親をバックアップするフォスタリング機関の議論もこれから。急激に里親を増やせば、ミスマッチも増え、間違いなく子どもにしわ寄せがいくでしょう。

 

ーー里親には手厚い支援が必要です。

 

 多くの里親が孤独感を持っています。巨大な権力を持つ児童相談所へ気軽に相談なんてできません。相談すれば、不適格の烙印らくいんを押され、里親ができなくなる恐怖もあります。

 

 施設には虐待を受けた経験のある子が6割、障害がある子も3割いると言われています。そうした子どもと24時間向き合うのは本当に大変なことです。

 

 本気で里親を増やすなら、現場経験などを義務化し、資格制度を創設すべきでしょう。今の専門里親も結局、一定の経験があって研修を受ければ誰でもなれる。今は少年野球の子が大リーグで試合するようなものです。

 

 それには今の里親への報酬では不十分。せめて施設で働く主任職員並みの報酬を保証することが必要です。

 

ーー児童相談所も疲弊していると聞きます。

 

 虐待相談件数は増加傾向にある中、どこもぎりぎりの状況なのではないでしょうか。まずは児童相談所も専門性を高める必要があります。

 

 例えば、地域包括支援センターには保健師や社会福祉士など国家資格を持った人がいるのに、児童相談所はそうではない。前の部署が土木だった人などもいます。福祉専門職の配置を義務化すべきでしょう。

 

ーーこれからの児童養護施設や乳児院についてはどうお考えですか。

 

 高齢者分野の施策を見ると良いと思います。全国の包括支援センターの多くを社会福祉法人が担っているように、今後、児童養護施設や乳児院などが児童相談所の機能をもっと担うことが求められるでしょう。

 

 現実として児童相談所の人材も足りない中、虐待相談件数は増加傾向です。社会福祉法人には入所機能だけでなく、家庭支援や地域の総合相談業務など多くの社会的なニーズがある。つまり多機能化と高機能化です。これまで戦後70年にわたり社会的養護を担ってきた児童養護施設の真価が問われている。最善の利益実現に向けた最善の努力を期待しています。

 

 

 

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