全社協が困窮者居住支援で検討会 札幌火災など背景に
2018年05月14日 福祉新聞編集部
全国社会福祉協議会は4月26日、セーフティーネット対策等に関する検討会の初会合を開いた。困窮者の住まいや生活支援が社会課題となる中、救護施設や養護老人ホームなどの実践を踏まえた提言を取りまとめる。具体的には、社会福祉法人が空き家を使って困窮者を支援する仕組みなどが浮上している。
同検討会は、全社協・政策委員会のテーマ別検討会として設置され、座長には宮本太郎・中央大教授が就任。委員には、救護施設や更生施設、生活困窮者支援を行うNPO法人の代表が名を連ねる。
検討会を立ち上げた背景には、近年各地で相次いだ無届け施設などでの火災がある。
今年1月、札幌市のアパート「そしあるハイム」で起きた火災では11人が死亡。入所者16人のうち13人が生活保護受給者だった。入所要件を高齢者に限定していないためアパートと同じ扱いになり、スプリンクラーの設置義務はなかった。
15年には川崎市の「吉田屋」、09年には群馬県渋川市の「静養ホームたまゆら」でも火災が発生。多くの生活保護受給者が亡くなっている。
本来、低所得高齢者の受け皿として、社会福祉法人が運営する養護老人ホームや救護施設などがある。しかし現状では、全国の救護施設の入所者が1万6700人であるのに対し、スプリンクラーの設置義務のない無料低額宿泊所と無届け施設を合わせた入所者は3万人以上と大きな差がある。
また、全国に976カ所ある養護老人ホームの平均入所率は87%。自治体が予算を抑えるために入所を抑制する〝措置控え〟が起きているとされる。中には40%以下の自治体もあり、閉園を余儀なくされた施設もあるという。
こうした中、検討会は低所得高齢者の居住支援などについて議論する。
具体的には、救護施設や更生施設、養護老人ホームなどによる支援機能の強化策等の機能強化策について検討する。社会福祉法人が地域の空き屋を活用し、無料低額宿泊所のような施設を整備する仕組みなどが浮上している。
このほか、検討課題として、無料低額宿泊所に求められる機能、社協やNPO法人、民生委員による活動についても取り上げるという。
さらに検討会では、今国会の改正生活保護法案で創設が予定されている「日常生活支援住居施設」の在り方についても検討を実施。提言に盛り込みたい考えだ。
会合は今後月1回のペースで開き、年内に提言をまとめる予定だ。
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