難聴者の聞こえを支援 補聴器専門店と連携する老健(横浜)

2018年0612 福祉新聞編集部
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認定補聴器専門店員が毎月来所し、利用者の聞こえの状態をチェックする

 横浜市都筑区の医療法人社団若葉会(中野雄二院長)の介護老人保健施設若葉が丘は、認定補聴器専門店と連携して難聴利用者の補聴器装用を支援している。コミュニケーション力が向上することで、個々の「らしさ」が引き出され、希望に添ったリハビリやケアの実現につながった。在宅復帰も進み、職員の負担軽減にも役立っている。

 

 

 若葉が丘(入所定員100人・通所30人、平均要介護度3・6)は、地域に根ざした医療・介護活動に力を注いできた若葉会が2002年に開所した。入所後も地域とのつながりが途切れないように、地域行事に積極的に参加するなど利用者の在宅復帰を進めている。

 

 特徴的な支援の一つが、テクノエイド協会が認定する補聴器専門店の神奈川リオネット販売(株)と連携した補聴器装用支援で、開所時からリハビリ室を中心に続けている。「補聴器を装用すれば、聞こえの状態が良くなり、コミュニケーション力が向上し、希望に添ったリハビリができることを実感してきた」と瀬古雅美主任は話す。

 

 しかし、介護職員からは「補聴器のことまで面倒みきれない」などの声があった。耳あな型補聴器を誤ってトイレに流したり、装着したまま入浴させ壊したり、紛失して受託賠償責任保険で損害賠償した経験もあった。

 

 それでも装用支援を続けたのは「在宅復帰を促すには自宅と同じように生活してもらうことが大切。自宅で補聴器を使っていれば施設で使ってもらうのは当たり前」という理念が施設トップにあったからだ。「紛失・破損しても保険で対応できる。リスクがあるから装用させないのではなく、リスクを減らす方法を考えることが大切」と中野和嘉・事務長は話す。

 

 その理念は、少しずつ施設全体に浸透していった。きっかけは、補聴器装用者が増えたことに気付いた瀬古主任が「補聴器に対する職員の意識を知りたい」と思い、14年に全職員にアンケート調査したことだった。

 

 結果は、装用に否定的な意見はなく、多かったのは「電源の入れ方や音量調整の仕方などが分からない」といった不安の声だった。そこでリハビリ室は、大平和佳子・言語聴覚士(ST)を中心に使い方を周知。ケア業務に位置付け、朝起きたら付け、風呂に入るときは外すなど積極的な装用支援を行った。

 

 また、1年前からは入所時に補聴器の有無を聞き、自宅に補聴器があれば持ってきてもらうことも始めた。

 

 

◆STが調整役担う

 

聴力を検査する大平ST(左)

 

 装用支援は、大平STとリオネットの担当者が連携して行う。リオネットは毎月訪問し、新規入所者の聴力を測定したり、装用者の聞こえの状態をチェックしたりして、聞こえを良くする方法を提案。大平STは、利用者や家族に聞こえの状態や装用の大切さを伝え、リオネットから補聴器を借り試験装用してもらうなどの調整役を担う。

 

 95歳の男性は、入院中に身体機能が変化し、聞こえの状態が悪化。意思疎通できない状態で入所したが、耳栓の形を変えたことで改善。意思疎通できるようになり在宅復帰した。
 身体機能が低下し、20年以上使っていた耳かけ型の付け外しが困難になった87歳の男性には、手元で電源や音量を操作できるポケット型を提案。1カ月試した結果、使いやすいことが分かり、家族の了解を得て購入することになった。

 

 また、介護職員にも装用支援することの大切さが浸透し、電池が減り、聞こえにくくなると大平STに連絡が来るようになった。

 

 現在、補聴器を装用しているのは4人。嫌がったり、家族の了承を得られなかったり、認知機能が低下して装用できないことも多いが、粘り強く支援している。コミュニケーション力が向上すれば、希望に添ったリハビリやケアができ、認知機能やADL(日常生活動作)の改善、孤立化を防ぐなど職員の負担を軽減できることが分かっているからだ。

 

 「いすから立ってもらう場合も、意思疎通できれば『立ってみましょう』と言えば済むが、意思疎通できなければ、職員が無理やり立たせないといけない。それは利用者にとって苦痛・不満だし、職員の負担も大きい」と大平STは話す。

 

 利用者との意思疎通はリハビリやケアの基本。若葉が丘の取り組みは改めてその大切さを教えてくれる。

 

 

 

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