福岡市社協が空き家マッチング 福祉転用へ建築士らと共同

2018年0625 福祉新聞編集部
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築100年の宿坊を障害者向け事業所に転用した

 福岡市社会福祉協議会が、市内の空き家を福祉目的に転用する「社会貢献型空き家バンク事業」に取り組んでいる。民家を中心に不動産流通に乗らない物件情報を収集し、福祉事業者とマッチングする仕組みで、これまでに2件を転用に結び付けた。社協主体で空き家の福祉転用事業を行うのは全国でも珍しい。

 

 事業の1例目となったのが、同市早良区にある利生院というお堂と宿坊が一体になった物件で、築年数は100年を超える。先代のオーナーである最後の堂守りが亡くなった際、「地域福祉に役立ててほしい」という故人の遺志を実現するため主に宿坊部分の福祉転用を図ることになった。

 

 市社協が事業者公募に携わり、民間の福祉サービス事業所が選定された。事業者が費用を負担し、風情ある建物の外観は生かしつつ、天井高を上げたり配管などの設備を改修したりして、軽度の精神障害者向け生活訓練事業所とした。

 

外観は生かし改修した利生院の室内

 

 現在、延べ約30人が習字や学習会といった生活訓練をしている。事業者によると、古民家のような落ち着いた雰囲気が利用者にも好評という。

 

 空き家バンク事業は、建築士ら専門家で構成する「古家空家調査連絡会」(長谷川美枝子・代表理事)と共同で行っているのが特徴だ。

 

 社協と連絡会の双方が窓口となり、地域住民などから空き家に関する情報を集める。社協は空き家のある地域の福祉ニーズの調査や、それを実現する福祉事業者の公募などを担当。連絡会は、転用する際に生じる建築法規や相続の問題解決に加え、税制優遇の適用可否など専門的知識が伴う手続きをする。

 

 建て替えではなく改修での対応を基本としているため、更地にした方が良い古過ぎて傷んだ物件は除外する。また、住宅や店舗といった一般市場で再利用しやすい物件は買い手が付きやすいため対象から外れる。転用を目指すのは、これら以外の一戸建てが中心となる。

 

 市社協が空き家の福祉転用を始めるきっかけとなったのが、「自分が死亡した後のことが心配」という高齢者と生前に契約を結び、葬儀関係や納骨などの事務手続きを行う事業だった。契約内容には家財処分も含まれているが、住まいそのものについては相続の問題など専門的なノウハウがなく扱いかねていた。そこで、専門家の連絡会と連携することを決め、2016年度から社会貢献型空き家バンク事業として始めることにした。

 

 福岡市社協の栗田将行・地域福祉部地域福祉課事業開発係長は「地域包括ケアシステムを構築する上での重要な課題の一つに、住まいの問題解決も含まれる。空き家を福祉転用できれば、地域の福祉的ニーズが充足するだけでなく、放置されていた空き家がなくなるという地域の安心にもつながる」と事業の意義を説明した。

 

 現在、2例目の事業として、同市東区の一軒家を一般社団法人が運営する就労継続支援A型事業所に通う軽度の精神障害者向けのシェアハウスにするための工事が行われており、今夏にも完成する見通しだ。

 

 今後は、転用件数を増やすために市社協の情報収集能力を強化する。具体的には、地域を知る民生委員と連携して空き家情報収集を行うほか、専用のホームページを立ち上げる。

 

 栗田係長は「件数が増えれば手続きをマニュアル化でき、より事業をスムーズに進められるようになるだろう」と期待を寄せている。

 

 転用にかかる改修費用の負担を軽減するため、市社協で基金を組むことも検討する。これにより、福祉転用に手を上げる事業者の幅も広げたい考えだ。

 

 

 

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