気付きを促す〝贈り物〟 障害者芸術に新機軸(新潟)

2018年1109 福祉新聞編集部
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広島カープファンの職員に贈られたイラストや新聞の切り抜き。来場者はダンボール箱を開けて楽しめる

 10月8日までの約3カ月間、新潟市内で開かれた「水と土の芸術祭」で、障害者芸術に新機軸が打ち出された。知的障害者が施設職員や家族らに手渡した手紙など90点を「贈り物」に見立てて展示する試みだ。障害者が日頃どんな人とどんなかかわりをしているかを見てもらうことが狙い。施設職員にとっては障害者とのかかわり方を見つめ直すきっかけとなり、「気付き」が促されているという。

 

 展示品は言葉を発することの少ない知的障害者が施設職員や家族に渡したもので、ラップで包まれ、段ボール箱に入っている。来場者は箱に書かれたキーワードをもとに興味のある箱を開けて、「何だろう、これは?」と想像を膨らませる。

 

 「作品の裏にある日常のやりとりにこそ、障害者の芸術性、表現の独自性があるのではないでしょうか」。そう語るのは企画した角地智史さん(29)。「社会福祉法人みんなでいきる」(大島誠理事長、上越市)の「新潟県アール・ブリュット・サポート・センター」のアートディレクターだ。

 

 障害者の描いた絵などが表彰されたり売れたりすることを目指すのも良いが、そうした枠に収まらない人は多い。そんな現実を見て、県内の障害者施設に眠れる作品の掘り起こしを呼び掛けた。

 

 キーワードは「贈り物」。ある福祉施設で障害者が彩り豊かな厚紙の箱を職員の餞別に手渡したエピソードにヒントを得た。「作品はありませんか」ではなく、「贈り物はありませんか」と募ったところ、13団体と個人13人が作品を寄せた。

 

前山さんが書いたノート

 

 

 就労継続支援B型事業所「結屋」(鈴木景子所長、新潟市)もその一つだ。ダウン症の前山礼佳さん(29)はノートに文字を書くことが大好き。6年ほど前のある日、家からそのノートを持ってきて、職員の内山孝子さんに黙って差し出した。

 

 内山さんは「読んでも意味は分からないけど、捨てずにとっておきました。今回出展する機会を得て、私たち職員が自信を持ちました」と話す。文章や絵の意味は分からなくても、「今日はちょっと元気ないな」といったことは分かる、そんな気付きに価値があることを展示によって再確認できたという。

 

前山さん(右)と、ノートを見つめる内山さん

 

 

 生活介護事業所「みのわの里ゆうあい」(長岡市)に通う五井雅人さん(21)の出展作品は「髪の毛」。床に落ちているのを拾って結んだものだ。自閉傾向があり、手先が器用な五井さんは家では「気持ち悪いからやめて」と言われ、施設の更衣室で隠れて結び、職員にそっと手渡していた。

 

 ところが昨年、地元の展示会にその髪の毛を出展すると、周囲の見る目が変化。五井さんは自信をつけ、施設内で配膳当番や掃除にも意欲的に取り組むようになった。

 

 鈴木裕平園長は「以前と比べ、職員の利用者に対する接し方も変わってきました。利用者からもらった物を捨てないようになりましたね」と笑う。

 

 芸術祭は新潟市などによる実行委員会が2009年度に初開催(来場者55万人)し、今回が4回目。テーマは「つながる。出会う。交ざり合う。」展示されるのは障害者の作品だけではない。

 

 「来場者が作品を通じて障害者の日常を垣間見る機会になればいいですね」と話す企画者の角地さん。福祉施設の職員が利用者を見る目が養われたことにも大きな手応えを感じている。

 

 

 

 

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