介護保険どうなる? 市民団体のQ&A集会で厚労省・財務省が直接回答

2019年0705 福祉新聞編集部
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参議院議員会館で開かれた集会

 来年の介護保険法改正に向けた議論が進んでいる。厚生労働省は論点に介護予防・健康づくりの推進、保険者機能の強化、持続可能な制度の再構築などを挙げる。財務省も軽度者(要介護1、2)の生活援助サービスの市町村事業への移行、ケアマネジメントの利用者負担の導入などを提唱している。参院選が目前に迫る中、介護保険は今後どうなるのか。市民福祉情報オフィス・ハスカップなど市民団体が6月4日、都内で開いた集会に、厚労、財務両省の職員が出席して質問に答えた。

 

 

【財務省の回答】

 

 要介護1、2を「軽度者」と定義する根拠は?

 

 社会保障審議会介護保険部会の報告書などから「中重度は要介護3以上」と読みとれ、それと対比して表現している。

 

 軽度者の生活援助サービスを市町村事業に移す必要はあるのか?

 

 財源は従来の介護給付と変わらない。介護給付では専門職によるサービスが基本だが、それに限らず多様な主体が利用者ニーズに応じて柔軟なサービスを提供できるようになる。

 

 利用者負担引き上げが必要な理由は?

 

 制度創設当初より介護費用は3倍増の11兆円、1号保険料は2倍増の5869円となった。厳しい介護保険財政の中で世代間、世代内の公平性を担保することが重要。能力に応じた負担のあり方も大事。

 

 ケアマネジメントに利用者負担を求める理由は?

 

 現行では負担がないため、利用者側からケアマネジメントに対するチェックが働きにくい。

 

 

【厚労省の回答】

 

 介護予防・健康づくりの推進が高齢者への過度な推奨にならないか?

 

 介護予防として「通いの場」の充実を進めているが、住民自らの活動を支援しており、本人の希望や意向に沿った取り組みが行われるようにしている。

 

 ケアマネジメントの利用者負担化は検討するのか?

 

 賛成派は利用者や家族に専門的業務であるケアマネジメントへのコスト意識をもってもらうために必要、反対派はサービスの利用抑制につながる危険性がある、との意見がある。これらを踏まえ検討する。

 

 多様な介護ニーズがある中でケアマネジメント手法の標準化は必要か?

 

 機械的な標準化を目的としたものではない。利用者の個別の事情を考慮すべき面と、利用者が誰であっても同様の対応をすべき面をみることが重要で、引き続き検討に努める。

 

 昨年10月から訪問介護の生活援助サービスの利用回数が多いケアプランを検証しているが、これまでの検証件数は?

 

 確立したデータではないが、回答のあった1043市町村で2921件あった。市町村がどのような助言をしたか、今年度に調査する予定。

 

 市町村が保険者機能強化推進交付金(得点に応じて交付金が出る)の得点を優先し、適切な要介護認定を行わないことを防ぐには?

 

 通知のもと各介護認定審査会で判断している。審査会業務に精通した人を派遣して技術的助言もしており、引き続き推進していく。

 

 認知症の人の悉皆調査を行う予定は?

 

 現時点ではない。

 

 介護人材確保には介護報酬の引き上げが必要では?

 

 介護報酬では介護事業者の経営状況などを踏まえ、介護が必要な人に必要なサービスが提供されるよう対応してきた。10月からベテラン介護職員に重点化を図りつつ更なる処遇改善を図る予定で、引き続き検討していく。

 

 

【意見交換】

 

◆福祉ジャーナリストの浅川澄一氏

 

 介護予防・日常生活支援総合事業は、従来の介護事業者が単価を下げて行っているサービスが大半で、住民主体によるサービスは限られている。多様な主体が参入しているとは言えず、事業としては大失敗だ。

 

 国は認知症の人の絶対数を一度も調べたことがない。要介護認定のデータから簡単に把握できるはずなのに。

 

 

◆淑徳大教授の鏡諭氏

 

 相変わらず介護保険の議論は財政論だと感じた。現場の声がなかなか届かない制度になってしまった。本来は制度の中で要介護者や家族が安心して暮らせるか、サービスが十分かを議論すべき。負担の議論は最後だ。

 

 毎日のように介護殺人や虐待が発生しているのは介護給付が十分でない表れではないか。

 

 

◆服部メディカル研究所の服部万里子氏

 

 ケアマネジャーへの相談に費用がかかれば、相談に行かなくなり、重度化してしまう。利用者によるチェックは、ケアマネジャーの質の向上に関係ない。利用者負担に2割、3割が導入されて介護の質が上がっていないことからも明白だ。

 

 

◆NPO法人暮らしネット・えん代表理事の小島美里氏

 

 利用者負担の原則2割化、要介護2までの生活援助サービスの市町村事業化、ケアプランの有償化が進められたら、制度は持続しても利用者の生活は続かない。厚労省の改正の論点には、独居や認知症、老老介護など高齢者が不安と思っていることを支えるものが何も入っていない。

 

 

 

 

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