転機迎えた紙印刷事業 新たな展開を模索(青森コロニー)

2019年0731 福祉新聞編集部
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紙折りなど利用者ができる仕事が減った

 障害者の訓練・就労に大きな役割を果たしてきた紙印刷事業が、いま大きな転機を迎えている。民間企業を含め、北東北3県で3本の指に入る印刷設備・技術を備える青森コロニー印刷(青森市)は、紙印刷需要や文字入力作業の減少という時代の変化と向き合い、新たな事業展開を模索している。 

 

 社会福祉法人青森県コロニー協会(横内正秋理事長)は、青森コロニー印刷の中核を担う障害者支援施設「セルプステーション青森」、同「青森コロニーリハビリ」など7事業所を運営する。

 

 印刷事業は、福岡コロニーなどのノウハウを学び、1963年からスタート。ドイツ・ハイデルベルグ社製の高速可動型菊全判カラー印刷機などによる高品質な印刷、全自動ラインによるスピーディーかつ安価な製本と丁寧な仕事ぶりで高い評価を受けている。

 

 印刷事業に携わるのは職員74人、A型・B型などの事業所利用者48人。営業職で採用された17人(県内14人、東京3人)が顧客を回り、民間企業と競争しながら仕事を獲得する。

 

 取引先は官公庁などを中心に6000件に及び、最盛期の2000年には約21億円の売り上げがあった。しかし、その後はカラーコピー機の普及や、パソコン・スマホの浸透により、チラシ広告、年賀状などの紙印刷需要は激減した。自分で文字データを作る顧客が増え、事業所での文字入力作業がなくなった。

 

 「昔は手にマヒがあっても手書き原稿をタイプで打つ仕事があったが、今はパソコンで文字入力できても仕事がない」と話す鈴木英明・事業部長。利用者は個々の希望や能力に応じて、デザイン制作、折り・製本作業に従事しているが、作業内容は以前と大きく変わった。

 

デザイン制作など仕事内容が変化している

 

 18年度の売り上げは約10億円と、最盛期の半分になった。「ここ十数年は右肩下がり。ペーパーレス化などもあり役所の仕事が大幅に減った。優先調達法の恩恵もほとんどない」と吉澤幸仁・営業部長は話す。

 

 紙印刷への厳しさは、同法人が04年から発刊してきたフリーペーパー「グルッポ」にも現れた。市内の飲食店などから広告料をもらい、クーポン券付きのA4判16ページの情報誌で、これまで市内全戸を含め約13万部無料配布していた。市民なら誰もが知っている情報誌として定着したが、SNSの普及とともに広告主が減り、惜しまれつつ今年6月に休刊した。

 

 1950~60年代に身体障害者の訓練・就労に適した作業として各地で行われるようになった印刷事業だが、紙印刷需要の低下、利用者にできる作業の減少などにより、見直しが迫られている。

 

 「カレンダーやパッケージなど絶対になくならない紙印刷の需要がある。それに対応できるような設備・技術を整えたい」と話す吉澤部長。チラシの情報をスマホでも提供する、紙媒体と電子媒体の融合によるサービスによって印刷需要減少に歯止めをかけようと躍起だ。

 

 一方、鈴木部長は「訓練・就労の場としての施設を考えれば、紙印刷にこだわりたいが、他の仕事にも目を向けないといけない。営業担当が顧客から箱折りなどの作業を受注してくれるのはありがたい」と話す。

 

 時代の変化のなか、多様な利用者にできる仕事の確保を青森コロニーは模索している。

 

 

 

 

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