津久井やまゆり園 殺傷事件から3年、現場で追悼

2019年0807 福祉新聞編集部
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講演する日浦さん

 神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で、入所する知的障害者19人が殺害された事件から3年となった7月26日、管理棟など一部を除き解体された同園の献花台には、黒岩祐治知事ら追悼に訪れる人が相次いだ。

 

 指定管理者として施設を運営する社会福祉法人かながわ共同会(草光純二理事長)は、入倉かおる園長らが献花したのに続き、法人の運営する障害者グループホームで暮らす人が手を合わせた。

 

 事件後、法人の各サービスを利用する人を報道陣が撮影することは制限される例が多かったが、本来の開かれた雰囲気が徐々に戻ってきている。

 

 入倉園長は「利用者さんと一緒に献花できて心強かった。職員たちもあの時のやりきれない悔しい思いを胸に今日まで生きてきたし、これからも生きていく」と話した。

 

 事件を起こした同園の元職員、植松聖被告(29)について報道陣から尋ねられると、「拘置所にいる被告とは面会していない。報道される被告の発言に耳を傾けるつもりは毛頭ない。被告には裁きを受ける覚悟を持って静かに過ごしてほしい」と語った。

 

 植松被告の初公判が2020年1月に予定されていることを受け、事件の背景をどう捉えるかが改めて話題になっている。

 

 同日午後、神奈川県知的障害施設団体連合会(出縄守英会長)は横浜市内で「やまゆりの日」の式典を開いた。出縄会長は、植松被告と接見を重ねている最首悟・和光大名誉教授(社会学)が、植松被告の犯行の動機を「津久井やまゆり園の入所者に嫉妬していたのでは」と分析していることを紹介した。

 

 家族関係など厳しい状況に置かれた自分と比較して、入所者が手厚く寄り添うケアを受けている姿を見た植松被告が嫉妬した、との見方だ。

 

 それを聞いた出縄会長は「嫉妬だったとしたら、津久井やまゆり園での支援は植松被告がうらやむようなものだったことになる。事件後、入所施設のイメージを悪くする報道があったが、この話を聞いて救われる思いがした」と話した。

 

 「だからと言って、入所施設ありきではない。サービスの選択肢がたくさんあり、それぞれの現場で職員が熱意を持って支えている。そういう意味で救われた」とも語った。

 

 式典では神奈川県の担当者から同園をめぐる現況の報告があったほか、社会福祉法人訪問の家(横浜市)顧問の日浦美智江さんによる講演があった。

 

 日浦さんは「事件の第一報を聞いて、1人での犯行だとは思えなかった」と回想。「重症心身障害者が通う『朋』を運営して痛感したが、この世に障害者という人はいない。誰もが名前を持ち、人と出会うことで心が耕される。人と人のつなぎ役は家族や職員だ」と話した。

 

 その上で「植松被告は心を耕される経験を十分持てたのだろうか。この点の解明が待たれる。私たちは理念ではなく具体的なエピソード(事実)を伝えることで、社会の価値観を変えていかねばならない」と語った。

 

【視点】「働いて稼ぐ」にこだわり

 

植松被告からの手紙

 

 7月29日、植松被告に面会した。「意思疎通できない人は安楽死させるべき」という主張は当初と変わらず。その理由は「働けないから」だという。「働いて稼ぐこと」へのこだわりは相当強い。生活保護や年金は「間違っている」とし、就労を促す制度にすべきとの持論も展開した。

 

 働いて活躍する著名な障害者の名前を数人挙げ、そうした人は安楽死の対象外だとも話した。障害者を憎んだり差別したりするというよりは、努力しないこと、働かないことを嫌悪しているようだ。

 

 そして、嫌悪の矛先は自身にも向かう。植松被告が教員を目指したものの、成就しなかった点は「勉強しなかったからだ。自業自得」と認める。そんな現実から逃避するかのように「大麻があれば人間らしく生きられる」とも語った。

 

 働くことにこだわる半面、その目標を実現できず「親に甘えていたかもしれない」と振り返る植松被告。裁判では、描いた理想と現実の開きに着目することになりそうだ。 

 

 

 

 

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