虐待対応をAIがサポート 全国初、三重県児相が実証実験 

2019年0829 福祉新聞編集部
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児童虐待への対応を支援するアプリの画面

 過去の児童虐待事案から、新たに発生した虐待事案の深刻度や再発確率をAI(人工知能)が予測し、児童相談所職員の判断を手助けする――。児相がAIを活用する全国初の実証実験が7月2日から三重県で進められている。児相業務が増加する中、業務の効率化や迅速な意思決定への対応が改善できるかを検証する。 

 

 システムは、産業技術総合研究所(産総研)などが開発した。

 

 三重県内で2012年度に発生した2件の虐待死亡事案を契機に、同県は翌年度から、統一した様式のリスク評価の運用を開始。18年までの6年間で県内児相が対応した虐待記録約6000件をデジタル化し、AIに学習させた。

 

 県内6カ所ある児相のうち、津市の中勢児相と伊勢市の南勢志摩児相の2カ所と、県児童相談センター(津市)に専用アプリの入ったタブレット端末計20台を配備。端末にデータを残さないなど、情報セキュリティ対策を徹底させた。

 

 児童福祉司ら児相職員がタブレット端末に、児童の氏名、年齢などの基本情報や写真、けがのある部位・状態、「傷・あざが首から上・腹部にある」といったリスクを評価する17項目を入力する。

 

 そうすると、AIが過去の虐待データを基に、一時保護の必要性をパーセンテージで表示するほか、虐待の重篤度、将来的な再発確率、支援終結までの日数を瞬時に予測する。データは蓄積され、AIが分析する過去事例の厚みが増し、より精度が高い判断につながるという。

 

 虐待の4分類(身体的、心理的、性的、ネグレクト)のうち、AIはネグレクトを除く3分類に対応できるという。

 

 従来は児相に戻ってデータを打ち込んだり、電話で上司に情報を報告したりしていたが、このタブレットを活用すれば、その場でデータを入力でき、上司や同僚らが同じタブレット端末を通じて迅速に情報を共有することができる。

 

 また、在宅支援と一時保護で、虐待の再発確率などを比較することもできる。過去の類似事案も表示されるので、どういった対応をしていたかを参考にすることができる。

 

 写真もタブレットで撮影できるほか、職員の客観的なけがの見立てをサポートするため、けがの種類や状態を説明したページも参照できるようになっている。

 

最終判断は職員の目で

 

 AIの強みは「人間では処理しきれない大量のデータを分析し、将来起きることを客観的に予測する」点にある。

 

 一方、発生頻度が極端に低い事案や過去に1度も発生していないタイプの事案に遭遇した場合、AIは対応できるのか。

 

 川北博道・三重県児童相談センター児童相談強化支援室長は「対応できない」と断言する。

 

 加えて、職員の判断とAIの予測に差異が生じることも想定されるとした上で、「最終判断は職員の目。AIの結果で保護を決められるのならば、誰でも出来る。逆にこれが全てとなると怖い話だ。現在のところはあくまで補助ツールとして考えている」と強調する。 また、このタブレットを活用する場面は、虐待通告受理後の初期調査に限らない。

 

 対応方針決定後の支援記録や経過も蓄積させ、将来的には、どのような指導、助言をしたら支援終結が早くなるかといった、より効果的な支援の在り方についてもAIに反映させたいとしている。

 

 このほか、重篤な虐待事案の担当を一部の職員に集中しないよう、業務量の平準化に向けた職員の管理調整にも活用する方針だ。

 

 来年2月までの実証実験期間に効果を見極め、本格導入を目指したいとしている。

 

 

 

 

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