小規模特養の基本報酬減で経営悪化 従来型の4割が赤字に

2020年0204 福祉新聞編集部
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小規模特養「ひろた」利用者と談笑する西岡施設長(左)

 全国に1万超ある特別養護老人ホーム(地域密着型含む)のうち、定員30人の小規模特養は約450ある。過疎地や離島などでは大規模特養はつくれず、採算はとれないが30人とした事情に配慮し、介護報酬が高く設定されてきた。しかし、2018年度改定で報酬が下げられ、一定期間後、通常規模特養(定員31人以上)と同じ報酬にまで下げる方針が既に示されている。地域の事情が解消されたわけではないのに報酬が下がることに、経営する社会福祉法人は危機感を募らせている。

 

赤字施設が増加

 小規模特養は、高齢者の人口が少ない(過疎地や離島など)、土地が高くて用地を確保できない(都市圏)といった事情で大規模特養の設置が難しく、全体として設備費が割高になることや、スケールメリットを生かせないことなどを考慮し、比較的高い基本報酬になっている。

 

 しかし、18年度改定で小規模特養の基本報酬は、平均で4%以上マイナスとなった=表参照。理由は小規模特養の17年度の収支差率が4・2%で、通常規模特養平均の1・6%より高いため、報酬の均衡と報酬体系の簡素化を図るとされた。

 

 福祉医療機構が調査した18年度の小規模特養の収支差率は、従来型が前年度比1・4ポイント減の0・3%、ユニット型が0・7ポイント増の6・9%。特に従来型は厳しく、赤字施設の割合が9・6ポイント増えて40%を占めた。同機構の小寺俊弘氏は「ここまで一気に赤字施設が増えるのは珍しい。報酬減で経営に大きな打撃があったとみられる」と分析している。

 

 

懸命の経営努力

 愛媛県砥部町の小規模特養「ひろた」(社会福祉法人広寿会)は01年に開設した。現在は短期入所(定員6人)、通所介護2カ所、居宅介護支援のサービスを提供している。

 

 「ひろた」のある旧広田村地域は人口679人、高齢化率53・6%(19年4月現在)。独居の高齢者が多く、特養の入所待機者も50人以上いる。地域の要介護高齢者の生活を支える、なくてはならない施設だ。

 

 小規模ゆえに開設当初からコスト管理の徹底、高い稼働率の維持(平均98・2%)に取り組んできた。

 

 それに加え、18年度の報酬減対策として、19年10月から定員4人だった短期入所を2人分増やした。2人分なら職員を増やす必要がなく、増収が見込めるためだ。さらに、給与規定の改定、仕入れ業者の見直しなどもしてきた。

 

 従来型個室の「ひろた」は、要介護4で計算(1単位10円)すると、年間372万円程度の減収となる。西日本豪雨の災害対策として定員超過で利用者1人を受け入れたので、すぐに大きな影響はないが、西岡真由美・施設長は「介護職員を1人を雇えるぐらいの金額。これが続くとなると厳しい」と話す。

 

何らかの救済措置を

 さらに小規模特養の経営に追い打ちをかけるのが、基本報酬を通常規模特養と統合する方針が示されていることだ。そうなれば基本報酬は大幅に下がる。

 

 それに対し、東京都や島根県では小規模特養が集まり、対策を検討したり、要望を出したりする動きが見られる。北海道大空町で小規模特養を2カ所経営する社会福祉法人女満別福祉会の高木恵一施設長は、「基本報酬が通常規模まで下がれば、約2000万円の減収になり、経営が立ちゆかなくなる。何らかの救済措置を検討してほしい」と訴える。

 

 もともと小規模特養の基本報酬が高いのは、大規模特養の設置が難しい特殊な事情を考慮したから。厚生労働省で今春始まる21年度介護報酬改定の議論では、報酬減ありきではなく、まずはそれぞれの特殊な事情が解消されたのか検証すべきだろう。

 

 

 

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