「コロナで死んでもいいし…」 今、児童養護施設で起きていること

2020年0527 福祉新聞編集部
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職員と打ち合わせする梛橋副施設長(左)

 「コロナに感染して死んでもいいし……」。横浜市のキリスト教児童福祉会が運営する児童養護施設「聖母愛児園」で梛橋雄一・副施設長は、入所している子どもからこう言われたという。

 

 新型コロナウイルス感染症の影響で、横浜市内の小中高校は2月末から休校に。その間、子どもたちはほとんど園外に出ておらず、梛橋副施設長は相当子どもたちにストレスがたまっていると感じた。

 

 梛橋副施設長はいったん気持ちを受け止めつつも「死ぬのはだめだよ。人生まだまだ楽しいことあるんだから」と語りかけたという。とはいえ、今後の見通しについて子どもたちにきちんと説明できないのが歯がゆい。

 

 同園には、10ユニットに分かれた本体施設1カ所と地域小規模施設1カ所があり、約70人の子どもたちが暮らす。体を動かす機会も極端に減っており、寝付きの悪い子どもも増えた。コロナへの恐怖心や非常事態である不安から職員に反発するケースも多いという。

 

 保護者との面会が制限されているのもストレスの一因だ。無料通話ソフトなどの活用を検討したが、園のパソコン数が圧倒的に足りないため断念した。保護者からは「オンラインで顔が見たい」という声も多いという。

 

 一方、同園では高校生以上は携帯電話を持つことが許されており、多くがバイト代を通信料に充てていた。しかし、非常事態宣言を受けて、全員アルバイトを止めさせた。「感染させるわけにはいかないので、職員が電話をかけて勤務先に謝罪した。命を守るためには当然」(梛橋副施設長)。その代わり、同園が携帯電話代を肩代わりすることを決めた。

 

 職員にとっても緊張の日々は続く。

 

 同園では仮にコロナ感染が発生した場合、どの年齢層でも対応できるベテランの職員4人がケアする方針を決めた。横浜市に電話で相談したところ「集団感染の場合、軽症なら病院への入院は難しいだろう」との見解を示されたからだ。

 

 だが、コロナ発生の際に現実的にどう動くべきかなどの指示はいまだ横浜市から示されていないという。同園の職員数はぎりぎりで、余裕はない。また施設にはゴーグルやガウンの準備も十分でなく、軽微な装備でケアに当たることになる。さらにケアする職員はそのまま自宅に帰って大丈夫なのか。不安が尽きない。

 

 梛橋副施設長は「感染したときの対応が示されないのが一番のストレス。施設内は常に空気が張り詰めている。職員を信じているが、クラスターが発生して、辞めたいという職員が出ても引き止めることはできず、施設崩壊もしかねない」と話している。

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