121人感染の北総育成園ルポ〈中編〉 ゴミ袋を防護服にしたギリギリの現場

2020年0709 福祉新聞編集部
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黄ゾーンで回診の準備をする看護師(北総育成園提供)

 北総育成園に対策本部が設置されても、白樫久子副園長は不安でたまらなかった。陰性の職員15人で、入所者65人をケアできないからだ。「感染リスクがある中、船橋市から80キロも離れた育成園まで誰も来てくれない」。そんな不安を、さざんか会と船橋市の応援職員が払拭した=表参照

 

対策本部への派遣状況

 

 さざんか会の宮代隆治理事長は、船橋市内の同法人22事業所に職員派遣を要請。約200人の職員に挙手方式で協力を求めた。「職務命令は難しかった。8人から手が挙がったときは本当にうれしかった」と話す。

 

 職員は4人ずつ2班に分け、1班2週間の予定で派遣。宿泊は育成園のゲストハウスを使い、危険手当の支給と派遣後はホテル等で2週間待機させることを約束した。危険手当は後日、1日1万5000円を8人に支給することを決めた。

 

 船橋市は、松戸徹市長が支援表明したことで、全部局で協力することになった。派遣職員は保健師3人、看護師2人、事務職員2人、支援職員3人。看護師は3~4日、事務・支援職員は1週間の交代制で、宿泊は廃校になった小学校を使った。

 

 事務職員の第1班は連絡体制整備と支援物資把握のために、情報システム課と危機管理課の職員を指名。その後は挙手方式で募集した。支援職員は、市立障害者施設の勤務経験者を募った。

 

 「今施設にいる職員を長期派遣するのは難しかった。4班以降は未経験者を施設で研修させ派遣した。1班3人が限界だった」と杉森裕子・市福祉サービス部長は話す。

 

 応援職員が来たことで、4月1日から「医療」「生活」「資財」の3チームによる対策本部の活動が始まった。

 

 医療チームは、入所者の健康状態を把握し、食事などケアの方針を決定。方針は朝夕の会議で伝えられ、生活チームがこれに基づきケアした。

 

 資財チームは、防護服の在庫管理などを担当。濃厚接触者で外出できない職員に代わり、銀行預金の出し入れや買い物など外部への用足しを全て担った。マスク約4000枚、防護服約1500着などは船橋市が用意。ほんの一時防護服が不足したが、資財チームがゴミ袋を加工するなどして乗り越えた。

 

 チームを指揮した石出広対策本部長は、活動が落ち着く4月21日まで本部に詰めた。ホテルが見つかるまでの10日間は、車や本部の簡易ベッドで寝泊まりした。

 

 「当初は2週間で職員が戻ると思っていたが、実際は1カ月以上かかった。応援が長期化する中で石出本部長はずっといてくれた。支援の継続性は保たれ心強かった」と白樫副園長は話している。

 

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北総育成園

 3月28日に国内最大規模となる121人の集団感染が発生した千葉県東庄町の障害者入所支援施設。重篤で入院した人を除く65人の利用者を1カ月半にわたり施設内でケアした。社会福祉法人さざんか会が船橋市から指定管理を任されており、利用者は知的障害が多い。 

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