福祉新聞フォーラム直前特集 正規、非正規の手当格差(林弁護士)

2021年1102 福祉新聞編集部
林和彦氏(弁護士・NPO法人ひかり福祉会代表理事)

 正規、非正規職員間の不合理な待遇格差を解消する「同一労働同一賃金」が4月、中小規模の社会福祉法人にも適用され、対応に苦慮する法人も少なくないでしょう。取り組みの方向性や方策を検討する上で、最高裁判所による待遇格差訴訟の判決は大変参考になります。

 

 講義では、正規、非正規間の賞与、手当、退職金、基本給などの格差の不合理性を判断した最高裁判決を手掛かりに、福祉施設の特徴を踏まえ格差是正のポイントをアドバイスします。NPO法人ひかり福祉会の実践事例も併せて紹介します。

 

 特に注目してもらいたいのは「手当」の格差です。正規に支給されている手当などが非正規に支給されないことは、いずれの最高裁判決でも「不合理」と判断されており、判例がほぼ確定したと言えます。非正規の比率が高く、幾種類もの手当を支給する傾向がある福祉施設では喫緊の対応が必要です。

 

 また、福祉施設では非正規職員の賞与が「ゼロ」か「寸志」に留まるケースも一定割合みられるので、この点も大きな課題になるでしょう。最高裁判決では、フルタイムの非正規職員への賞与不支給は不合理に当たらないとしましたが、何も対応しなくていいということにはなりません。勤務時間、日数に応じたバランスの取れた待遇を整えていくことが重要です。

 

 待遇格差はパート・有期労働法第8条で示す通り、(1)業務の内容、業務に伴う責任(2)配置変更の範囲(3)その他の事情――を考慮して判断されます。ただ、福祉施設では正規、非正規間の業務内容は大きく変わりませんし、異職種への配置転換や転勤が極めて少ない点も変わりません。

 

 そこで、「業務に伴う責任」の所在を明確化しておくことをお勧めします。他部署との連絡調整や緊急・事故時の対応など、非正規にはない業務上の責任が正規に求められている場合は、待遇格差の不合理性判断の重要な考慮要素になるからです。

 

【はやし・かずひこ】 1942年生まれ。弁護士。日本大学法学部・法科大学院教授などを歴任。全国社会福祉協議会中央福祉学院で40年以上にわたり、施設の人事労務管理について教壇に立つ。埼玉県内で障害者の生活・就労支援などを行うNPO法人ひかり福祉会の代表理事も務める。

 

法人紹介

 2013年5月設立。拠点数1、事業数2(生活介護、就労継続支援B型)。定員は生活介護10人、就労継続支援B型10人、職員総数17人(正規5人、非正規12人)。平均勤続年数(正規職員)5・2年。平均年齢(正規職員)51歳。総事業収入6000万円。