ムンプス膵炎――おたふくかぜワクチンを

2022年0304 福祉新聞編集部
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 激しい腹痛と嘔吐、痛みはみぞおちより少し下くらいから背中にも広がり、膝を曲げて胸に膝を近づける体育座りのような姿勢でいると痛みが少し軽くなるので、そのような姿勢をとるようになる。これは急性膵炎の典型的な症状です。症状が強い腹痛だけのこともあります。

 

 小児の急性膵炎の原因は、先天性胆道拡張症などの解剖学的異常が最も多いのですが、実はワクチンで予防できる感染症が原因で起こることがあります。ムンプスウイルス、いわゆる、おたふくかぜの原因ウイルスです。ムンプスウイルスは感染すると14~21日の潜伏期を経て、耳下腺(耳の下にある唾液腺)が痛みを伴って腫れてきます。約70%は片側が腫れると反対側の耳下腺が腫れてきます。そして、約50%はあごの下の唾液腺である顎下腺も腫れてきます。「おたふくかぜは両側が腫れないと、また感染する」という俗説がありますが、本当にムンプスウイルスによる耳下腺炎であれば、片側だけで終わっても抗体が作られるため再感染することはありません。

 

 ところが厄介なことに、ムンプスウイルスに感染しても30~40%は不顕性感染、つまり、唾液腺が腫れないことがあるのです。そして、急性膵炎を起こしたときに、耳下腺や顎下腺が腫れていれば、容易にムンプスウイルスが原因と判明するのですが、耳下腺も唾液腺も腫れていないと血液検査でムンプスウイルス抗体の上昇を確認するまでは診断ができないことがあります。

 

 膵臓では唾液腺と同じアミラーゼと呼ばれるでんぷんを分解する消化酵素が作られていることもあり、ムンプスウイルスに感染すると約4%は急性膵炎を発症するとも言われています。

 

 また、ムンプスウイルスに感染すると、髄膜炎、脳炎、難聴、精巣炎などの重篤な合併症を起こすことも知られています。そのため、ムンプスウイルスワクチン(おたふくかぜワクチン)は、世界中120カ国以上でMMRワクチン(はしか・風疹・おたふくかぜ混合ワクチン)として国の予防接種プログラム、日本で言うと定期接種ワクチンに組み込まれています。

 

 ところが、日本では先進国で唯一、おたふくかぜワクチンが定期接種に組み込まれておらず、任意接種となっており、希望者が自費で接種を受けるということになっています。

 

 おたふくかぜワクチンの副反応には無菌性髄膜炎が0・04~0・06%程度に発生しますが、3歳未満で接種することでリスクを下げられると言われています。日本小児科学会は、1歳過ぎたら1回目の接種、小学校入学前後の1年間で2回目の接種をすること推奨しています。

 

(そごう・つよし 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科副部長)

 

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