精神科病院の虐待通報を法制化へ 検討会では多くの委員が賛同

2022年0426 福祉新聞編集部

 厚生労働省は4月15日、精神科の医療機関における患者への虐待について、発見した人に通報義務を課すよう法制化する考えを「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」(座長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所長)に示した。

 

 現在、障害者虐待防止法は保育所、学校、医療機関での虐待は通報義務の対象にしていない。法制化には多くの委員が賛同しているが、同法の対象とするのか、精神保健福祉法に位置付けるのかは見解が分かれている。

 

 障害者虐待防止法では通報先が市町村となっている。同法改正を支持する立場は、医療機関を所管しない市町村であれば、第三者として適正に対処できるとの期待を抱く。

 

 一方、日本障害者虐待防止学会(小山聡子理事長)は、保健所(都道府県)が通報先となることを理由に精神保健福祉法の改正を支持すると表明した。

 

 市町村を通報先とした場合、虐待された患者の医療保険の保険者(市町村)を特定するのに時間がかかる半面、保健所に通報すればそうした特定作業が不要であり、より迅速に動けるとした。

 

 市町村の対応力をどう見るかによって見解が分かれた形だ。厚労省はこの議論を5月にもまとめる。

 

 また、同日の検討会では、精神科病院に強制的に入院させる「医療保護入院」について、資料から「将来的な廃止」との文言を削除した。日本精神科病院協会(日精協)の委員が反発したことなどが要因。削除したことについて、委員から異論が上がった。

 

 厚労省は3月16日の検討会資料で医療保護入院について「将来的な廃止も視野に、縮小に向け検討」としていたが、今回の資料では「将来的な継続を前提とせず、縮減に向け検討」と修正した。

 

 医療保護入院をめぐっては、その判断基準があいまいで、家族に同意を求めることが家族にとって負担だとする批判が繰り返し浮上している。

 

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