特養で週休3日制導入から1年 職員にゆとり、サービスの質も向上

2022年0713 福祉新聞編集部
休みが増え、仕事にもハリが出たという

 埼玉県川口市の社会福祉法人徳誠会の特別養護老人ホーム「春輝苑」が、職員の福利厚生の一環で2021年8月から「週休3日制」を本格的に導入した。夜勤も含めた全時間帯を9時間45分勤務にして、1週間の公休を1日増やすというもの。全国的にも週休3日制の施設が少ない中、導入から1年を迎えようとしている。導入経緯などを担当者に聞いた。

 

 同法人は03年の設立以降、資格手当の常設や風通しの良い職場づくりなど、さまざまなことに取り組んだことで、16年に離職ゼロを達成した。

 

 定着率の改善に伴い、夜勤の厳しい就業環境が新たに課題として浮上。従来、午後4時半から翌日午前9時半まで17時間拘束される勤務形態は負担が大きく、退職要因の一つになっていた。

 

 24時間体制の介護施設として、開設当初から就業規則に「1カ月単位の変形労働時間制」を盛り込む同施設。「現場職員が長年勤められる勤務形態を模索する中で、週休3日制に移行できるのではと考えました」と高木輝久施設長は話す。

 

 全職員の8割以上の同意のもと、18年度に職員を中心にした実行委員会を発足。半年以上の時間を費やし、週休3日制のためのシフトや現場マニュアルを整備した。

 

 全時間帯の勤務形態を実働9時間45分、休憩1時間15分に変更。17時間拘束から夜勤の負担が大幅に減少した。早番や日勤、遅番は、実働8時間から1時間45分勤務時間が増えたが、残業で対応していた業務を勤務時間帯に終えられるという心理的な負担軽減もあり、スムーズに制度移行できた。

 

 シフトは、増員なく現員で組み換え、正規職員51人のうち34人が週休3日で勤務(看護職は週休2日制)。職員配置は、介護職だけで2・5対1の割合で、短時間勤務が多い非正規職がスポット勤務でサポートしている。

 

 年間休日数は156日と大幅に増え、プライベートの時間の充実に伴い心身ともにリフレッシュすることができ、サービスの質はむしろ改善したという。

 

 シフト調整やマニュアル作成、職員の理解に加え、急な欠勤時の対応など導入へのハードルもあるが、高木施設長は「職場環境改善に向け、職員が一丸となったことが新制度に移行できた要因ではないでしょうか」と成功の秘訣を話す。

 

 業務効率化などを図り、今月からは9時間勤務による週休3日制実現を目指す。「退職率や新卒・中途採用の改善につながればと思います」(高木施設長)と期待を膨らませている。

 

 徳誠会=03年4月設立。特養90床、短期入所生活介護10床、通所介護や居宅支援事業も行う。職員は正規51人、非正規24人。人件費率65・3%(正規職のみ54・3%)。

 

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