救護施設退所者の自立支援 地域サロンと居宅生活訓練で

2022年0721 福祉新聞編集部
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サロンは利用者と退所者の心のよりどころになっている

 浜松市の遠州仏教積善会(左右田泰丈会長)が運営する救護施設「慈照園」(定員50人)は、赤い羽根福祉基金による助成事業を活用し、地域でのサロン事業と短期の居宅生活訓練事業に取り組んだ。いずれもスムーズな地域移行につなげるのが狙いだ。

退所後の居場所づくり

 慈照園は、浜松駅から車で10分ほど。閑静な住宅街にある。地域移行した退所者が気軽に集えるようなサロンは、自治体や企業にとって採算が取れないため、地域にほとんどないのが現状だ。

 

 左右田雅子園長は「孤独感に伴う精神的不安から、アルコール依存や過食による体調不良、散財などを理由に、施設に戻ってきてしまうこともありました」と体験を話す。

 

 サロンは、施設から道路を挟んだところにある空き事務所を借りて開いた。退所者のサロン利用者は全部で19人。利用人数は会によってまちまちだが、月に1~2度の食事作りでは調理方法を学び、職員や参加者と食卓を共にする憩いの場とした。コーヒーの入れ方教室では、民生委員や元職員とも交流した。

 

 左右田園長は「仲の良かった利用者や、世話になった元職員が参加する会では、参加者も増えます。退所後も顔見知りに会える居場所ができて喜んでいます」と振り返る。

 

 利用者の作業場としても活用している。「施設の外で作業することで『気分転換になる』という利用者の声を多く聞きます」と言う。今後、職場に通う疑似訓練の役割も果たしているようだ。借りている事務所は、法人の持ち出しで家賃を払い、今年度以降もサロンや作業場として継続利用する。

短期居宅訓練

 居宅生活訓練事業は、施設が借りたアパートで原則1年間1人暮らしをする。地域移行を目指すための生活保護法での事業で、同法人では3部屋借りて実施している。

 

 「全部が利用中の場合、他の利用者がトライしたくてもできないケースがたびたびありました」という。期間が1年間と長く、利用者が二の足を踏むこともあった。

 

 助成事業でアパートを1部屋借り、1泊から体験できるようにした。3年間での利用人数は19人。このうち、4人が一般就労、5人が正規の居宅訓練を経験。そのまま地域移行できたのは2人。「1日でも1人暮らしができると、自信を持つようになったと実感します」。

 

 地域の家賃相場は、ワンルームマンションで月3万7000円。更新料や光熱水費も必要だ。職員による管理も大変で負担が大きいことから、助成事業が終わるとアパート契約も終了した。代わりに、施設改築に合わせてキッチンやユニットバス付きの1人部屋を2部屋施設内に整備して訓練を継続している。

 

 「利用者に合わせて訓練内容を考えるため、施設内でも継続可能と判断した」と左右田園長。施設外とは緊張感が異なるが「地域移行に向けて、いつもの2人部屋の生活から着実にステップアップできていると感じます」と評価している。

 

 3年間の助成総額は、596万1549円。主に事務所、アパートの賃貸料だった。

 

 遠州仏教積善会=1912年3月、静岡監獄浜松分監長から刑務所出所者の保護について寺院と篤志家に委託があり、「遠州保護会」として設立したのが始まり。93年3月まで更生施設として役割を果たした後、同年4月から救護施設として事業を開始し、現在に至る。

 

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