国連の障害者権利委員会が初の対日審査 精神医療などが論点に

2022年0829 福祉新聞編集部

 国連の障害者権利委員会は8月22、23両日、障害者権利条約を批准した日本の取り組みに対する初の審査をスイス・ジュネーブで行った。精神医療や教育をめぐる問題が大きな論点となった。同委員会は9月中旬までに日本に対し、総括所見(勧告)を出す予定だ。勧告に法的な拘束力はないが、各国政府は〝国際基準〟に沿うよう対応を迫られることになる。

 

 審査は同委員会の委員が日本政府に質問し、日本政府がそれに回答する「建設的対話」という形で行われた。その模様はインターネット(国連ウェブTV)で中継された。

 

 22日、日本時間午後10時からの審査は約3時間に及んだ。精神医療については委員から「強制入院を禁止するペースがすごく遅い。今後もこのペースが続くのか」など多くの質問が上がった。

 

 障害児の意見表明を支える仕組み、障害児が一般の児童と分離されずに教育を受ける仕組み、障害のある女性が女性であることによって複合的な差別を受けないようにする仕組みについても質問が集中した。

 

 条約の国内の監視機関である内閣府障害者政策委員会(石川准委員長)が今年4月にまとめた見解は、これらの質問と同じ問題意識を持つ。「障害者の意思決定支援」「精神医療」「教育」の三つに審査の重点が置かれるのは必至だ。

 

 また、日本障害フォーラム(JDF、阿部一彦代表)も今年7月、条文ごとに日本政府の対応に関する見解をまとめた。JDFは今回の審査に傍聴団を送り込んだ。

 

 2006年の国連総会で採択された同条約は障害者への差別を禁止し、健常者と同様の権利を保障することを求めている。14年1月に批准した日本に対する審査は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により約2年遅れての実施となった。

 

福祉新聞の購読はこちら