障害者総合支援法など、政府が閣議決定 居住と就労の幅広げる

2022年1026 福祉新聞編集部

 政府は10月14日、障害者総合支援法などの改正案を閣議決定した。障害者の住まいや働き方の幅を広げることが柱。精神障害者については、強制入院の在り方を本人の権利擁護の観点から改める。難病患者の支援も強化する。改正内容は多岐にわたり、改正する法律は8本に及ぶ。厚労省は12月10日の会期末までの成立を目指す。施行は一部を除き2024年4月1日。

 

 住まいについてはグループホーム(GH)の定義を変える。入居者のうち希望する人がアパートなどでの暮らしに移れるよう支援すること、移行後の定着を支えることを支援内容に加えた。

 

 就労については働き方の選択を支える新サービス「就労選択支援」を創設する。また、短時間なら働ける精神障害者らを雇う企業のメリットになるよう、障害者雇用促進法に特例を設けて雇用率への算定を認める。

 

 これらは障害者が福祉サービスの枠にとどまることのないよう、住まいや働き方の多様化を進めるものと評価できる半面、福祉からの離脱促進とみる向きもあり、法案審議の論点となりそうだ。

 

改正法案のポイント

精神障害者の権利擁護

 精神保健福祉法の改正事項としては、第1条(目的)に「精神障害者の権利の擁護を図る」を追加した。

 

 これに象徴されるように、改正事項は精神障害者の権利を守る視点を意識した。医療保護入院については市町村長が同意できるケースを広げるほか、入院時に入院期間を6カ月以内の範囲で決める仕組みを導入する。

 

 また、入院患者のもとを第三者が訪問して傾聴、情報提供する「入院者訪問支援事業」を都道府県の事業として設ける。精神科病院での職員による障害者虐待について、見つけた人が都道府県に通報するよう義務付けている。

難病に「登録者証」

 難病患者や小児慢性特定疾病児童については、難病法、児童福祉法を改正する。医療費助成の開始時期を申請日ではなく、重症と診断された日からに前倒しする。

 

 難病患者については、都道府県・政令市が「登録者証」を発行する事業を設ける。患者が福祉サービスを円滑に利用できるようにすること、治療法の開発に向けてデータ収集を強化することが狙い。

 

 今回の改正法案は改正する法律の数が多く、改正事項も多岐にわたるため、17日の社会保障審議会障害者部会では、国会で十分な時間をとって審議するよう求める意見が委員から上がった。

 

※初出時、「厚生労働省は10月14日、障害者総合支援法などの改正案を国会に提出した」とありましたが、正しくは「政府は14日、障害者総合支援法などの改正案を閣議決定した」でした。同改正案は26日に国会に提出されました。訂正します。

 

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