国会図書館の蔵書デジタル化推進 障害者が業務の担い手に

2022年1101 福祉新聞編集部
ページごとに丁寧にスキャニングする吉田さん

 国立国会図書館はコロナウイルスの感染拡大で開館を制限せざるを得なくなったことを機に、蔵書のデジタル化を推進している。業務を日本財団が受託し、全国8カ所の障害者就労支援事業所に再委託する形で、7月から事業が本格的にスタートした。障害者が業務の担い手となることで新たな活躍の場が生まれており、工賃アップも期待されている。

 

 国立国会図書館の蔵書デジタル化業務は、要求基準が高いことなどから請け負う企業は少なかった。そこで昨年度、日本財団がコロニー東村山(社会福祉法人東京コロニー)と試行したところ、一定の成果、評価を得て、業務を受託することになった。 

 

 今年度は8事業所が約3万7000冊、約520万コマを分担して行う。各事業所では届けられた本の状態を確認した後にスキャニングする。取り込んだ画像をモニターで点検し、サムネイル・目次を入力し、納品する。

 

 劣化している本もあるため慎重に扱い、スキャニングもズレやほこりが入らないよう丁寧な作業が求められるため、黙々と集中してできる人に適している。コロニー東村山の利用者、吉田勇一さんは「後世にも残る仕事なのでやりがいがある」と話す。

 

 業務に不可欠な耐火書庫(約2000万円)、スキャナー(1台約500万円)などの費用は日本財団が各事業所に助成。また、コロニー東村山の利用者、齋藤隆さんが、国立国会図書館の細かい要求基準に合う特殊な画像変換ソフト、工程管理システムを独自に開発したことも大きかった。ソフトなどは7事業所に無償提供され、一丸となって取り組んでいる。

 

 コロニー東村山は今年度約5500冊、約77万コマを受託。現在50人がかかわり、うち障害者は6割。少しずつ障害者が中心となるよう作業を組み立て、就労継続支援B型の工賃は約5万1000円を目指す(全国平均1万5776円、20年度)。また「主力の印刷事業の売り上げが落ちているので、デジタル化事業も新たな柱にしたい」(高橋宏和・コロニー東村山副所長)との思いもある。

経済的自立を支援

 日本財団の村上智則さんは「障害者が経済的に自立して生活できるように支援したい」と話す。国立国会図書館の業務受託は今後も続ける予定だが、各事業所が所在地の図書館や公文書などのデジタル化業務を受けて需要を掘り起こすことにも期待をかける。

 

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