「こどもまんなか」目指して官民結束を 小倉將信・こども政策担当大臣新春インタビュー

2023年0104 福祉新聞編集部

 いよいよ今年4月、こども家庭庁が誕生します。厚生労働省の子ども家庭局や内閣府の子ども・子育て本部などを移管し、内閣府の外局としてこどもに関する福祉行政を担います。これほど大規模な省庁再編は2009年の消費者庁以来です。一方、少子化対策や児童虐待など解決すべき課題は待ったなしの状況にあります。新たな庁は国の在り方をどう変えていくのか。小倉將信・こども政策担当大臣に話を伺いました。

 

 ――就任から4カ月がたちました。現場の印象はどうでしょうか。

 

 これまでも保育所や児童養護施設などさまざまな現場を視察しましたが、就任後は障害児や貧困支援も含め多様な声に耳を傾けてきました。

 

 改めて現場の情熱に触れましたし、こども支援は命を預かる大切な仕事だと思います。大臣としての責務の重さも感じました。

 

 ――年間出生数は16年に100万人を切り、わずか6年で80万人を下回ることになりそうです。

 

 少子化は一つの施策で、すべて解決するわけではありません。原因も経済的理由や、仕事との両立、出会いの減少、不妊などさまざまで、新型コロナも加速化の一因でしょう。

 

 少子化は、経済規模の縮小や、社会保障を支える現役世代の負担増につながります。警察や消防、福祉などの担い手も減るでしょう。

 

 独身や子育てを終えた人など全国民への影響も大きい。だからこそ社会全体で支えることが大切です。

 

 ――古来より日本はこどもを大切にする国でした。22年末には子育て支援に力を入れる方針を打ち出しています。

 

 4月から出産育児一時金を50万円と大幅に増額します。また妊娠の際に伴走型支援と合わせて10万円相当を給付。児童手当の拡充も議論しています。

 

 また、保育の質の向上に向けて取り組むことも決まりました。

 

 30対1である4、5歳児クラスの職員配置基準について、大規模保育所で25人以上を担当する場合、1人分のチーム保育推進加算を追加します。また、登降園時の業務負担を緩和するため、支援員を配置できるようにします。

 

 子育て支援は現金給付と現物給付のバランスが重要です。今後もライフステージに合わせた施策を一つひとつ改善していきます。

 

 ――4月にはこども政策の司令塔となるこども家庭庁が発足します。

 

 こども家庭庁は、総合調整を行う長官官房、すべてのこどもを支えるこども成育局、困難を抱えるこどもに関するこども支援局の3部門とし、430人体制になります。

 

 大切なのは就学前の育ちの保障です。保育所や幼稚園、認可外施設、障害児支援事業所などが共有すべき指針を定めます。施設に通っていない未就園児への対応も重要です。

 

 一方、困難な状況にあるこどもへの支援も充実します。昨年成立した改正児童福祉法を着実に進めながら、縦割りもなくして多様な課題に対応したいと思います。

 

 ――自治体との関係はどう考えていますか。

 

 これまで地方からの要望は主に産業振興やインフラ整備が多かった。しかし最近は要望の最優先事項にこども政策を掲げる首長が非常に増えています。

 

 こども政策では国と自治体は両輪です。就任以降、複数回にわたり意見交換を行いましたが、今後も定期的な協議の場を設けます。

 

 ――発足後は財源の議論も始まりそうです。

 

 こども政策に関する予算は15年前と比べると、保育の無償化もあり、3倍に増えました。さらなる予算増には安定財源が不可欠だと考えています。

 

 ただ、将来像を示さないと国民の納得も得られない。ロードマップを含め将来像を示すことが政治の責任だと考えています。今夏の骨太の方針は大きな山場になりそうです。

 

 ――そうした中で社会福祉法人への期待はどういう点にありますか。

 

 地域の社会資源としての存在は非常に大きいと考えています。

 

 核家族化により妊娠や育児の際に孤立して悩む人は多い。ぜひ伴走型で支える役割を担っていただければと思います。

 

 保育所や児童養護施設、乳児院など児童福祉施設を対象に、多機能化に向けたモデル事業も始めます。

 

 これまで培った専門性を基盤に支援内容を広げることで、どの地域で産まれても安心感を持てる社会を作りたいと思います。

 

 こどもや若者が希望の持てる社会でなければ日本に未来はない。そんな覚悟を持ち、「こどもまんなか社会」を目指します。民間、自治体、国というすべての関係者が結束し、こども政策を強力に前へ進める時がいよいよやってきます。

 

 

 おぐら・まさのぶ 1981年東京都生まれ。東京大卒業後、日本銀行に入行。2011年に自民党東京都連の公募で衆議院東京23区(町田市・多摩市)支部長に就任し、12年に衆院議員に初当選した。その後総務大臣政務官や自民党青年局長などを歴任。22年8月の第2次岸田改造内閣で内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画、共生社会、女性活躍、孤独・孤立対策担当も兼務)として初入閣した。現在4期目。趣味はジョギング。

 

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