「底点」の女性支援施設、再生へ かにた婦人の村

2023年0106 福祉新聞編集部
介護が必要な人も増えている

 性暴力や性的な搾取を受けた女性が暮らす婦人保護施設(47カ所)のうち、唯一全国から受け入れる「かにた婦人の村」(五十嵐逸美施設長、千葉県館山市)の初の建て替え計画がまとまった。2023年3月着工、24年3月竣工の予定。24年4月1日は22年5月に成立した「困難な問題を抱える女性支援法」(以下、新法)の施行日だ。新施設は新法の象徴的な支援拠点になりそうだ。

 

 「かにた」は売春防止法に基づく婦人保護施設で1965年に設立。運営する社会福祉法人ベテスダ奉仕女母の家(大沼昭彦理事長、東京)の創立者、深津文雄牧師は、ここで暮らす女性たちを「社会の底辺」ではなく「底点」と呼んだ。

 

 開設当時、知的障害や精神障害があり、集団生活になじめない女性は「こげつき」「性格異常者」などと呼ばれ、各地から「かにた」に送り込まれた。その人たちを「底辺」とくくると、個々の尊厳を奪いかねないとの危機感があったという。

老朽化と高齢化

 それから57年。個々の尊厳を保つにはほころびが大きくなった。

 

 広大な丘陵地に点在する六つの寮は老朽化し、2019年秋には台風で屋根が損壊した。

 

屋外の階段はさびており、現在は使われていない

 

 入所者の高齢化も進んだ。定員100人のところ11月末時点の入所者は45人、平均年齢は68歳。要介護者もいるため、職員数は配置基準以上に必要で人件費がかさむ。

 

 打開策として法人は定員を80人に減らし、3階建ての集約型施設に建て替える。相部屋でプライバシーを守りにくい居室は個室にする。地域との交流スペースや、トラウマを抱えた女性をケアする心理治療室も設ける。

24年4月は新法施行

 新施設での生活が始まる24年4月は、法的にも転機を迎える。

 

 婦人保護施設は売春する恐れのある女性を保護更生する役割を担い、入所期間は長くなる傾向にあった。24年4月からは新法が施設の根拠法となり、名称は「女性自立支援施設」に変わる。

 

 新法では医学的・心理的な援助による心身の健康の回復、退所後の相談援助を含む自立支援が重視され、「必要とする人が入りやすく、退所時も安心できる施設」にシフトしていく見込みだ。

 

 法人はこのことを広く知ってもらうためにも、総額11億3300万円の建て替え費用の一部を寄付で賄うことを決断。このほどクラウドファンディングサイト「READY FOR」で寄付募集を始めた。23年3月20日まで受け付ける。

 

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