農福連携で“三方よし”  イチゴの新商品誕生も(栃木県)

2023年0302 福祉新聞編集部
イチゴを収穫する利用者

 栃木県が2018年から始めた農福連携マッチング事業が、地元企業を巻き込んで大きく広がっている。

 

 同事業は、「働き手がほしい」農家と「働く場がほしい」障害者施設をつなぐもの。施設には、利用者の収入増や社会参加につながるメリットがある。

 

 マッチングは、県内7カ所の県農業振興事務所が農家の作業依頼をまとめ、事務局のとちぎセルプセンターに送付。センターは登録151施設に依頼内容を送り、手を挙げた施設と農家との協議の場を設け、細部を調整した上で契約書を交わす。

 

 依頼内容は、種まき、除草、収穫、後片付けなど多様。「施設から遠い」「時間が朝早い」などの理由で契約に至らないこともあるが、依頼の9割は成立。20年度は45件、21年度は34件、22年度は23件の契約を交わした。

 

 事務局の大久保倫子さんは「契約件数が減ったのは、施設と農家が直接契約に至ったケースが20件以上あるため。施設にとっていいこと」と話す。

 

 同事業は、地元企業にも注目され、アイスなどを製造するフタバ食品が、出荷シーズン後のイチゴをピューレ用として収穫することを依頼。農家は出荷できないイチゴで収益を得ることができ、施設は高い工賃で仕事ができる。企業も原材料を安定確保でき、〝三方よし〟だという。

 

 昨年6月には42人が5日間(1日2時間)作業し、400キロを収穫した。12月にはそのイチゴと練乳を使った「いちごにかけるソース」が新発売された。

 

 「農作業がない冬場に作業できたり、利用者のやりがいや工賃向上につながったりするなど、農福連携のメリットは施設にも多い。就労支援A型は最低工賃、B型は最低工賃の半分の契約料を達成するため、もっと農福連携の裾野を広げたい」と大久保さんは話している。

 

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