障害者65歳問題 千葉市の処分は違法 東京高裁で原告が勝訴

2023年0403 福祉新聞編集部
控訴審での勝訴を報告する天海さん(左)

 65歳になったことを機に千葉市に障害福祉サービスの支給を打ち切られ、介護保険サービスへの移行で自己負担が生じたのは不当だとして、脳性まひの天海正克さん(同市・73)が処分の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(村上正敏裁判長)は3月24日、同市の処分は違法だとして、取り消しを命じた。

 

 慰謝料を含め約27万円を天海さんに支払うことも同市に命じた。2021年5月の千葉地裁判決は天海さんの訴えを退けたが、2審は一転して天海さんの勝訴となった。

 

 判決は、住民税非課税世帯の天海さんより収入のある障害者が、介護保険サービスを利用した場合に自己負担がゼロになる事例があることに着目した。

 

 その事例は境界層措置と呼ばれる減免制度によって生じるもので、判決は収入の比較的高い人が、低い人よりも負担軽減されることを「障害者相互の不均衡」と指摘。その不均衡を避けるため、同市は障害福祉サービスの支給を続けるべきだったと批判した。

介護保険優先は支持

 一方、障害者総合支援法第7条については、介護保険優先の原則を規定したものだとする千葉地裁の判断を支持した。介護保険利用を望む場合の、障害福祉サービスとの併給調整だとする天海さんの主張を退けた。 

 

 訴状によると、天海さんは14年7月に65歳となるまで1カ月70時間の障害福祉サービス(居宅介護)を利用し、自己負担はゼロだった。

 

 介護保険の申請を拒んだところ同年8月1日、障害福祉サービスを打ち切られ、全額自費でサービスを利用。後に介護保険を利用し、1カ月1万5000円の自己負担が発生した。

社保審も差異を問題視

 介護保険は障害福祉サービスの利用と比べて自己負担が増えることなどから敬遠されがちで、「65歳問題」と呼ばれる。

 

 厚生労働省は65歳になった障害者を一律に介護保険サービスに移すのではなく、個別事情を考慮するよう自治体に通知している。

 

 そのため、天海さんと同様のケースでも自治体によって対応が異なる。22年6月の社会保障審議会障害者部会報告は、そうした差異が生じないよう留意すべき具体例を示すことを厚労省に求めた。

 

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