不適切保育の実態は 初の全国調査 通報義務化も検討

2023年0522 福祉新聞編集部

 こども家庭庁は5月12日、全国の自治体と保育施設を対象にした不適切保育の実態調査の結果を公表した。昨年4~12月の間、認可保育所で、市町村が不適切保育が疑われるとして事実確認を行った1492件のうち、914件を不適切保育と確認していた。このうち、虐待と確認されたケースが90件あったことも分かった。

 

 昨年、静岡県裾野市の保育所で発覚した不適切保育を受けた対応で、国主体では初の実態調査となった。不適切保育を「罰を与える・乱暴な関わり」「差別的な関わり」などの5類型と位置付け、昨年4~12月の件数を全国1741の市区町村や認可保育所(2万2720施設)などに尋ねた。

 

 市区町村は1530自治体、認可保育所は2万1649施設が回答。併せて、自治体の取り組みも探り、不適切保育の報告基準や手続きを施設に周知させている自治体が29%にとどまっていたことなども明らかになった。

 

 認可保育所への調査では、自治体を通じて不適切保育の件数を尋ねた結果、計1万9603件だった。0件と回答した施設は全体の73%(1万5757施設)を占めた。31件以上あったと答えたのはわずか0・4%(82施設)だったが、1施設で百件単位の回答をするケースもみられた。

 

 施設の回答に大きなばらつきが生じた背景について、同庁保育政策課によると、不適切保育の判断基準が明確ではなく、例えば「園児の手を引っ張る」行為でも状況や回数、強さなど、具体的にどの程度、範囲までのことを指すのか、各施設で捉え方に差が出たとしている。

ガイドライン策定 考え方を明確化

 調査結果を受け、同庁は今後の対策も示し、同日、文部科学省との連名で自治体に通知。不適切保育の考え方を明確化し、保育施設と自治体が未然防止や発生時に取り組むべき対応を示すガイドラインを策定した。

 

 不適切保育は、幅広く解釈できる5類型の位置付けではなく、「虐待等(虐待やこどもの心身に有害な影響を与える行為)と疑われる事案」と定義。ただ、現場から「具体的な事例も示してほしい」との声も上がっており、今後、具体的な事例を示すことも視野に対応策を練る。

 

 また、高齢者、障害者、児童養護施設職員による虐待は、法律で自治体への通報が義務付けられているが、保育所での虐待は義務化されていないことに着目。同庁は児童福祉法を改正して通報を義務付けることを検討する。

 

福祉新聞の購読はこちら