〈社会福祉ヒーローズ〉ごく当たり前の機会を 変化や成長を間近に

2023年0523 福祉新聞編集部
学生たちの前で話す弓場さん(右奥)

ふる里学舎蔵波青年寮(千葉・袖ケ浦市)

支援員 弓場洸紀さん

 

福祉型障害児入所施設は、保護者の虐待や疾病などにより家庭での養育が難しい18歳未満の障害児を保護し、将来を見据えて自分の力で生活できるようサポートする。弓場さんは2021年4月の施設開設時に配属され、ときには兄、ときには父のような気持ちで日々こどもたちに寄り添っている。

 

例えば、飲酒、喫煙、窃盗を繰り返していたA君。施設の物を壊したり自分を傷つけたり……。A君に無視されることがあっても、何かあるたびに正面から向き合い続けた。良いところは全力で褒め、悪いところは全力で叱る。そんなかかわりの中で少しずつA君も変わり、「20歳になったら一緒にお酒を飲みたい」と言ってくれた時は本当にうれしかった。

 

知的と発達の障害のある小学生のB君。施設に来た時はやせ細っていたが、ほかのこどもたちに囲まれて過ごし、ご飯もたくさん食べるようになり、表情も明るくなった。みんなで旅行した時は、B君にとって初めての旅行だったらしく、これまで見たこともないような顔をして楽しんでくれ、旅行を企画して良かったと心の底から思った。

 

弓場さんは「みんなで仲良く暮らす、風呂に入る、食事をする、外出する、そんな普通の家庭ではごく当たり前のことが、この子たちには貴重な体験で感動につながる。その機会を提供するのが私たちの仕事で、斬新で画期的な福祉をしているわけではない」と言う。家族のようなかかわりの中で、こどもたちの変化や成長を間近に見られるのがこの仕事の特権でもあり、やりがいにもなっている。

 

もう一つ、弓場さんは障害者支援の魅力を伝える「タスクプロジェクト」も担当している。法人説明会やインターンシップに集まった学生に、広く障害福祉についてグループディスカッションなどを通じて考えてもらう。若手職員が現場のリアルを伝えるイベントなども開催している。これらの活動が目指すのは、施設のこどもたちも含めて障害のある人もない人も普通に働き、暮らしやすい社会にするためだ。

 

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