福祉機器を活用 認知症の人の「できる力」引き出す

2014年1124 福祉新聞編集部
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相談に応じる看護師の伊藤さん

 福祉機器を活用して認知症高齢者の自立生活を支えようと試みている地域包括支援センターがある。東京都世田谷区の「若林あんしんすこやかセンター」だ。本人の「できる力」を機器と専門職の連携で引き出す支援は「住み慣れた地域で暮らしたい」という願いをかなえる大切な取り組みになっている。

 

医師の依頼がきっかけ

 

 同センターは、社会福祉法人こうれいきょう(佐藤洋作理事長)が2006年に区の委託を受け運営を開始。5人の職員(社会福祉士3人、主任ケアマネジャー1人、看護師1人)が総合相談やケアマネジメント、権利擁護などの支援活動を行っている。

 

 同センターが認知症高齢者の支援に機器を使い始めたのは11年。地区内の開業医から「軽度認知症の独居男性の服薬を支援してほしい」と依頼されたのがきっかけだ。すぐに看護師の伊藤光世さんらが訪問したが、支援は難航。解決策を模索する日々が続く中、区内で開かれた福祉機器講座に参加した職員が、認知症高齢者のための服薬支援機器と電子カレンダーのパンフレットを持ち帰った。

 

 「効果は分からないが使ってみよう!」。伊藤さんは、すぐに機器のある国立障害者リハビリテーションセンターに、㈱タムラ企画のアラーム付き薬入れの貸与を要請。国立リハセンの職員と同行訪問して使用を勧めたが、男性の了解は得られなかった。

 

時間が来るとアラームが鳴り、服薬を知らせる

時間が来るとアラームが鳴り、服薬を知らせる

 

工夫重ね大きな効果

 

 そこで伊藤さんは男性の主治医に相談。薬入れの使用を勧めてもらうとともに、服薬回数を朝1回に調整してもらった。また「アラームが鳴ったら薬入れを逆さにして薬を取り出す」といった動作を練習し、一人で使えることを確認。薬入れを食後の服薬時に気づきやすいテーブルの上に置き、最初の1週間は、確認のため服薬時間に訪問するようにした。

 

 ところが男性は「アラームがうるさい」と布団の下に薬入れを隠してしまうなどした。それでも伊藤さんらは粘り強く支援。かかわった専門職が「自分で飲めてすごい!」と繰り返し褒め、本人の意欲を高めるようにした結果、2カ月余りで8割以上の確率で服薬できるようになった。

 

 一方、デイサービスの予定確認に1日2~3回来所したり、予定日時外に家の外で迎えを待っていたりする軽度認知症の女性に、日付と曜日が表示される内山技術研究所のLED版電子カレンダーを貸与。よく見るテレビの上に置き、すぐ横にデイサービスの日時を書いた紙を貼った。その結果、来所回数は月1回ぐらいに漸減。外で待つこともなくなった。

 

使ってもらえるように メッセージも

使ってもらえるようにメッセージも

 

 

本人の力を引き出す

 
 認知症高齢者の支援に機器を使い始めて3年余。これまでに6人が薬入れ、5人が電子カレンダーを使用した。「薬入れは本人が使えるよう環境を整えることが大切。自分で服薬できたことが自信や意欲を高め、『自分でやる』という気持ちにつながる」「電子カレンダーを一緒に見て確認することで、言い争いが少なくなり関係が良好になった家族がいる」と伊藤さんは話す。

 

 支援を通じて専門職間の連携も深まった。薬入れの表側に孫の描いた絵やメッセージを貼るなど本人が喜んで機器を使ってくれるようなノウハウも蓄積されてきている。今後は、薬局で薬入れに薬をセットし服薬状況を確認したり、薬入れを勧めてくれたりする医師が増えれば、確実に服薬できる安心な環境が期待できるという。

 

 認知症高齢者の「できる力」を引き出す同センターの支援活動は始まったばかり。地域包括支援センターがキーとなって機器を活用しながら、専門職が連携・協働する新たな取り組みは、地域包括ケアの実現にも欠かせないものになるはずだ。

 

 

 

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